脂質異常症

脂質異常症

はじめに

血液中に”悪玉コレステロール(LDL-C)”や中性脂肪(TG)が多すぎることを、以前は「高脂血症」と呼び、動脈硬化症になりやすい病気とされてきました。しかし、”善玉コレステロール(HDL-C)”が少なすぎても同じように危険なので

(1)悪玉コレステロール値(LDL-C)が高い

(2)中性脂肪値(TG)が高い

(3)善玉コレステロール値(HDL-C)が低い

ことをまとめて「脂質異常症」と定義されました。

脂質代謝異常症の患者さんの大半は症状が全くありません。しかし、家族性高コレステロール血症の場合には、しばしば手足の腱(けん)や皮膚にコレステロールの成分が溜まることによって、腱の一部が大きくはれたり、皮膚に結節(けっせつ)という「しこり」ができたりします。また黒目のふちにそってコレステロールの白い色素の沈着(角膜輪)がみられることもあります。いずれも一般人の数倍程度にLDLコレステロールが高くなっていることが原因です。
 中性脂肪の高い患者さんの中には、急性膵炎を突然起こしてしまうことがあり、その場合は激しい腹痛や吐き気、下痢などがみられることがあります。
 一方、脂質代謝異常症の合併症として、特に重要なのが大血管合併症であり、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症といったものが一般的です。狭心症や心筋梗塞では胸の圧迫感や胸の痛みが特徴的です。脳梗塞では手、足の麻痺や呂律が廻らない、場合によっては意識がなくなるといった脳の働きの障害が症状として現れることがあります。

脂質異常症は、それだけでは特に症状はありませんが、体中の血管の中で、静かに動脈硬化と呼ばれる変化が起こります。動脈硬化が進行すると全身の動脈が硬くなり、次第に血管の内側が狭くなって血液が通りにくくなります。

心臓の血管が詰まった場合には急性心筋梗塞、脳の血管が詰まったときは脳梗塞になり、生命を脅かします。

近年、ライフスタイルの欧米化が進み、脂質異常症と診断される人が増え、それに伴って動脈硬化症の人が増えてきました。

概要

食生活の欧米化や過食、運動不足などといった生活習慣の乱れによって、肥満(内臓脂肪の蓄積)を上流とする、脂質の異常がみられる人が多くなってきました。脂質とは、主にコレステロールや中性脂肪のことを指し、健康診断や人間ドックでは必ずチェックされている項目です。
 コレステロールは本来、細胞を構成する成分の1つであり、身体にとって必要不可欠なものです。また、ある種のホルモンや胆汁の原材料としても利用されています。コレステロールは、悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールと、善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールの2つに大きく分けられます。

  • LDLコレステロール

LDLコレステロールは、適量であれば上記のような用途で適切に利用や処理をされますが、過食や運動不足、肥満などによって、余分なLDLコレステロールが血液中にあふれてしまうと、LDLコレステロールの性質がやや変化し、血管の壁にじわじわと浸み込んで溜まるようになります。血管の壁に溜まったコレステロールは、そこで炎症を引き起こします。この炎症が長引くと、血管の壁が内腔(ないくう)に向かって厚くなっていくとともに、血管全体が硬くなります。これがいわゆる「動脈硬化(どうみゃくこうか)」といわれる状態です。
動脈硬化が徐々に進行すると、やがて血管の内腔が極端に狭くなります。すると血液の流れがよどんでしまうとともに、血栓という血のかたまりができて血液の流れをせき止めるようになります。いわゆる「狭心症」や「心筋梗塞」、「脳梗塞」はこのような過程を経て発病するのです。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった「大きな血管の合併症(大血管合併症)」を予防するためにも、食生活の見直しや運動不足の改善とともに、コレステロールを目標値に改善・維持する工夫が必要となります。
女性では、閉経後にLDLコレステロールが上がりやすくなることが知られています。女性ホルモンのバランスの変化によってLDLコレステロールの代謝が低くなるのです。

  • HDLコレステロール

HDLコレステロールは、身体の余分(過剰)なコレステロールを掃除し、取り除いてくれる働きを持っています。したがって、血液中のHDLコレステロール値が低い状態は、身体にとって都合が悪い状況ということになります。実際に、HDLコレステロールが低い状態は、大血管合併症の危険性を高めることが知られています。一般的にHDLコレステロール値は、後で述べる中性脂肪の値とシーソー関係にあるので、中性脂肪の高い人は中性脂肪を下げるように生活習慣の改善あるいは薬物療法を行うと、HDLコレステロールの改善が見込まれます。また食物繊維(しょくもつせんい)を多くとること、運動をすることもHDLコレステロールの改善に役立つことが知られています。

  • 中性脂肪

中性脂肪は、いわゆる「あぶら」であり、料理で使うラードと同じです。中性脂肪もまた、生活習慣の乱れに伴って高くなる場合が多く、過食によるカロリーオーバーや甘いものの摂り過ぎ、動物性の脂質を中心としたあぶらものや揚げ物、アルコールなどが密接に関係しています。中性脂肪の高い状態は、大血管合併症の危険性を高めることが知られています。また、膵臓(すいぞう)の炎症(膵炎:すいえん)を突然起こすこともあります。

LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の異常は、いずれも生活習慣の乱れが原因であることが大半ですが、しばしば遺伝的な問題による場合があります。家族性にみられることが多く、生活習慣の乱れが必ずしも原因とは限りません。このようなケースが疑われる場合には家族調査を行うことがあります。特に家族性高コレステロール血症の患者さんは比較的多く、軽症タイプのものは500人に1人くらいの割合で見受けられます。非常にまれ(100万人に1人の割合)ですが、重症タイプ(LDLコレステロール値が通常の数倍以上の状態)で、かつ飲み薬の効果が不十分な場合は、透析のような血液浄化(けつえきじょうか)の機械を使用して、LDLコレステロールを除去することもあります。

脂質異常症には、大きく分けて 以下の三つのタイプがあります。

  1. LDL(悪玉)コレステロールが多いタイプ:
    高LDLコレステロール血症(LDL-C 140mg/dl以上)
  2. HDL(善玉)コレステロールが低いタイプ:
    低HDLコレステロール血症(HDL-C 40mg/dl未満)
  3. 中性脂肪(トリグリセライド: TG)が多いタイプ:
    高トリグリセライド血症(TG血症)(中性脂肪 150mg/dl以上)

コレステロールは1日のうち、ほとんど変化しませんが、中性脂肪は食後3~6時間かけて上昇します。ですから、食事療法や薬物療法の効果をみる場合は、午前中に朝食抜きでの採血が好ましく、それができない場合は採血時間を一定にする必要があります。

大部分の高LDLコレステロール血症や、高TG血症、低HDLコレステロール血症は、体質、食習慣の欧米化、運動不足、体重増加など生活習慣が主な原因で、成人以降に発症します。

これらの脂質異常症は、他の病気に伴って起こるもの(続発性)と、他の病気を伴わずに起こるもの(原発性)とがあります。

他の病気によって起こる続発性脂質異常症には、ホルモンの分泌異常によるもの(甲状腺(せん)機能低下症、副腎皮質ホルモンの分泌異常など)や、糖尿病、 腎臓病、肝臓病、さらに副腎皮質ステロイド治療、経口避妊薬によるものなどがあります。

この場合、原因の病気の治療が大切なので、原因を見極めることが必要です。原因となっている病気の治療で、脂質異常症の治療をしなくても改善することもあります。

他の病気によらない原発性脂質異常症の中には、遺伝による高コレステロール血症の場合もよくあります。家族に脂質異常症や動脈硬化性疾患が多い方は、遺伝性かどうかの診断がとても大切です。

脂質異常症は、放っておいても丈夫でしょうか?

特に痛くもかゆくもないし、検査で高いと言われただけだし、おいしいものが食べられなくなるのは嫌だからこのままにしておこう、という方もいらっしゃるかもしれません。

では、放置すると、どのようなことが起こるのか。

動脈硬化進める最大の危険因子

悪玉コレステロールや中性脂肪が高い、あるいは善玉コレステロールが低いと、動脈硬化の進展に深く関わってきます。動脈硬化とは実際どのようなことが起こるのでしょうか?

血液中にコレステロールなどの脂質が多い状態が続くと、血管の壁に余分な脂が沈着し、「プラーク」(粥腫(じゅくしゅ)、ここでの「粥」はおかゆのような状態のこと)と呼ばれる塊が作られます。

こうした余分な脂は比較的短期間で血管壁にたまるため、柔らかくて壊れやすいのですが、時間の経過とともに血管の壁がどんどん分厚くなって、血管が詰まり やすい状態になります。このような、血管の壁の変化を”粥状(じゅくじょう)動脈硬化”と呼んでいます。

不安定なプラークが破れると、破れた部分を修復するため、血液の成分の一つである血小板が集まり血栓ができます。

この血栓が大きくなって動脈を塞いでしまうと、血液はその先に流れなくなり、血流の途絶えた組織や臓器は壊死します。脳動脈が詰まれば脳梗塞、心臓の冠動 脈が詰まれば心筋梗塞、足の動脈が詰まれば急性動脈閉塞症を発症します。

脳梗塞や心筋梗塞は、日本人の死因の上位を占めています。このように、脂質異常症を放置すると、症状がないまま動脈硬化が進行し、生命の危険にさらされたり、後遺障害が起こったりするのです。

動脈硬化を進行させる因子は、脂質異常症以外に高血圧、糖尿病、喫煙、家族の既往歴などがあります。しかし、近年、脂質異常症は動脈硬化の危険因子の中でも最大の要因であると言われています。

症状がないから、そのままにしておこう、ではなく、進行を防ぐために適切な治療を生涯続けることが大切です。

では、脂質異常症と言われたら、どのように動脈硬化を予防したらよいのでしょうか? 治療は、まず食事療法、体重の是正、禁煙、運動療法といった生活習慣の改善<図5>から始めましょう。

食事療法のポイント

肥満傾向が認められる場合には、まず標準体重を目標に減量をする必要があります。標準体重は身長(m)×身長(m)×22で計算できます。

減量は、急激にではなく、1か月間で現在の体重の5%程度の減量から始めるのが体重維持のポイントだと思ってください。1日の摂取エネルギーは、次のように計算して求めます。

1日の適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×25~30(kcal/kg

以下に示す食習慣のポイントを心がけましょう。

  • 和食を多くとりいれる
  • 朝食、昼食、夕食をきちんととる
  • なるべく腹八分目にする
  • 就寝前2時間は食べない
  • よく噛(か)んで食べる
  • 早食い、まとめ食いはできるだけ避ける
  • 薄味にする
  • 外食はできるだけ控える
  1. コレステロール摂取量は1日300mg以下にしましょう。
  2. 動物性の脂肪を減らし、魚や植物性の脂を多くしましょう。
  3. アルコールは1日25g以下に。具体的には…ビールだと中瓶1本、日本酒の場合180ml、焼酎なら100ml程度、ワインは200ml程度。
  4. 食物繊維を多くとりましょう(食物繊維はコレステロールの吸収を抑えます)。
  5. 魚、大豆製品を多くとりましょう。
  6. 清涼飲料水や菓子類などの過剰摂取は控えましょう。
  7. マーガリン、ショートニング(食用加工油脂の一種)、菓子類に含まれる悪い脂(トランス型不飽和脂肪酸)の過剰摂取は控えましょう。
  8.  

~LDLコレステロールが特に高いと言われたら~

すでに説明しましたように、栄養バランスをよくしても、改善しない場合は、コレステロール摂取量200mg/日以下にしてみましょう。また、質の悪い脂を避けることも効果的です。

~中性脂肪が特に高いと言われたら~

生活習慣の改善が極めて大切です。栄養バランスの適正化を徹底しましょう。特に清涼飲料水やスナック菓子は、糖質が多く、中性脂肪を増やしやすいので、摂取量は注意が必要です。アルコールはやめましょう。

継続が力…運動療法

毎日何らかの形で、体を動かすことは、身体的にも精神的にも好ましいことがはっきりしています。

たとえば、脂質に対しては、中性脂肪が低下し、HDLコレステロールは上昇します。このほか、血圧を低下させる、糖尿病の血糖コントロールがよくなる、さ らに、うつ病の予防、がん予防、動脈硬化の予防など、さまざまな良い効果があります。

逆に、運動不足で体力、とくに持久力が低下している人ほど、動脈硬化が進みやすく、がんを含めあらゆる死亡率が高いことも分かっています。食事療法と合わ せ、脂質異常症治療の基本となりますので継続して行うことが肝心です。

最適な運動は有酸素運動です。1日30分程度(1週間合計180分以上)、毎日行うのが理想的です。

運動の強さは、心拍数110~120/分程度を目安に、ちょっときついけど続けられる、と感じる程度。くれぐれも無理は禁物です。

理想的な有酸素運動

散歩、ウォーキング、軽いジョギング、エアロバイク、水中歩行、サイクリング、アクアビクス、水泳などの有酸素運動は、15分以上続けると効率よく脂肪が燃えだすため、1回15分以上行うのが望ましいです。

日常生活で、運動をする時間をつくるのが、難しい方もおられますね。その場合は、現在の生活パターンを変えずにできる運動が一番現実的です。

たとえば、通勤時に「バス停一つ分歩く」「自転車で行くのを徒歩にする」「エレベーターやエスカレーターを使わず、階段を使ってみる」などです。雨の日は 無理をせず、最低週3回以上を目標にするのが、続けやすいポイントかもしれません。

運動の注意点

現在、治療中の病気がある場合は、主治医にどのような運動療法が可能かを確かめてください。治療中の病気が不安定な場合、運動を控えねばならないこともあります。くれぐれも無理をしないように。

生活習慣改善プラス薬物療法

食事療法、運動療法を組み合わせても、脂質異常症が改善しない場合、内服薬での治療が必要になってきます。

(1)動脈硬化がすでに起こり、治療中の方 (2)糖尿病や高血圧、喫煙など、さらに動脈硬化が進みやすい環境にある方 (3)遺伝的に動脈硬化を起こしやすいことが分かっている方(たとえば家族性高コレステロール血症など)は、LDLコレステロールや中性脂肪をより低下さ せねばなりません。こうした動脈硬化のリスクが高い患者さんでは、これ以上進行しないようにすることが非常に重要で、基本的には診断時から薬物療法が必要 になります。

個々の患者さんで目標値は違いますから、治療中の方は主治医に確かめてください。

近年、脂質異常症の患者さんが増え、コレステロール、中性脂肪を低下させる薬が、広く処方されるようになりました。これらの薬は脂質異常を改善させるだけ ではなく、一部の薬では動脈硬化の進行を直接、抑え、改善させる作用もあることが分かってきています。

現在処方される薬には次のものがあります。

  1. HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)
    肝臓でのコレステロール合成を抑え、LDLコレステロールを強力に低下させ、中性脂肪も低下させます。
  2. 陰イオン交換樹脂(レジン)
    腸内でコレステロールが豊富な胆汁酸と結合して、コレステロールを便中に排泄させ、低下させます。
  3. 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)
    腸内でコレステロールが豊富な胆汁酸の再吸収を抑制することにより、コレステロールを低下させます。
  4. フィブラート系
    主に肝臓で中性脂肪が作られるのを抑える薬です。LDLコレステロール値を低下させたり、HDLコレステロール値を上昇させたりする効果もあります。
  5. プロブコール
    LDL
    コレステロールを胆汁酸として排出させたり、LDLコレステロールの酸化を抑えたりして、動脈硬化を予防する働きがあります。
  6. ニコチン酸系
    ビタミンの一種で、肝臓で中性脂肪が作られるのを抑えます。また、HDLコレステロール値を上昇させる効果もあります。
  7. EPA(エイコサペンタエン酸)
    青魚に含まれる成分(不飽和脂肪酸)から作られた薬で、中性脂肪値を下げる効果があります。また、血液をサラサラにする効果もあります。

脂質異常症の治療薬は、LDLコレステロールや、トリグリセライドを低下させるだけでなく、それ自体が、血管壁の動脈硬化を改善し、脳梗塞や心筋梗塞の再 発を予防する効果が期待できることが分かってきています。しかし、薬さえ飲めば安心というわけではなく、あくまで生活習慣を改善したうえでの話です。

珍しくない遺伝性の脂質異常症

脂質異常症に、遺伝性の病気があるなんて、聞いたことがないという方もおられるかもしれませんが、実はあります。

それが、家族性高コレステロール血症です。遺伝性の代謝異常症の中では最も多い疾患だと言われています。

自分も当てはまるのでは、と心配される方もいらっしゃるかもしれません。その場合は主治医に相談のうえ、しっかりと動脈硬化の予防をしていきましょう。

家族性高コレステロール血症[Familial Hypercholesterolemia(FH)]

LDLコレステロールが高く、若いときから、心臓の血管に動脈硬化を起こす遺伝性の疾患です。頻度は軽症のケースが500人に1人以上、重症は100万人に1人以上と言われ、日本では25万人以上と推定されています。

症状は、若いころからLDLコレステロールが高いこと以外、ほとんどありません。一部の人では、黄色種と呼ばれるコレステロール沈着による黄色っぽい隆起 をした斑点が、手の甲、膝(ひざ)、肘(ひじ)、瞼(まぶた)などに見られます。

LDLコレステロールは通常、肝臓で処理されるのですが、この疾患では肝臓で処理できないため、血液中にたまって、若い人でも動脈硬化を起こし、特に心筋梗塞、狭心症を発症させます。

心筋梗塞や狭心症の発症年齢は、男性では20歳代から起こり、40代がピーク、女性では30代から始まり、50代がピークとなります。このように、若くし て心筋梗塞を中心とした動脈硬化性疾患を起こすのが特徴です。重症の場合、幼児期に心筋梗塞を発症することもあります。

遺伝性ですので、親、兄弟、叔父、叔母、祖父母、子供など、血のつながった方の中にも同じようにコレステロールが高く、心筋梗塞、狭心症などの心臓病が発症する人があることも特徴です。

このような遺伝素因を持っている患者さんは、そうでない患者さんと比べると、心臓の血管の動脈硬化が進みやすく、狭心症や心筋梗塞が早い段階で発症します。予防するには、できるだけ早く診断し、LDLコレステロールを低下させる必要があります。

診断には、LDLコレステロールの測定をはじめ、家系内調査、アキレス腱の厚さのチェック、LDL受容体遺伝子の変異検査(血液検査)などを行います。

治療は、低脂肪食の指導、薬物療法(主にスタチン系の薬剤)を行い、重症例ではLDLコレステロールを除去する治療「LDLアフェレーシス(注参照)」が必要になります。

定期的に血液検査や、心臓、動脈の超音波検査、運動負荷検査をして、心臓の血管に動脈硬化が起こっていないかを確かめながら治療を続ける必要があります。

(注) LDLアフェレーシス:血液透析装置のような血液を体外循環させる装置で血液中のLDLコレステロールを除去する治療法

どんな場合、家族性高コレステロール血症を疑うべきか?

  • 未治療のLDLコレステロールが180mg/dl以上である
  • 皮膚や腱に黄色腫がある
  • 家族(両親、祖父母、子供)で以下に当てはまる人がいる
    • LDLコレステロールが180mg/dl以上など
    • 脂質異常症で治療中である
    • 若年で冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)と診断されている(男性は55歳以下、女性は65歳以下)

自分や家族も、もしかしたらと思われた方は、ぜひ主治医に相談してください。

おわりに

増え続ける脂質異常症は、やっかいな病気です。最初は数値の異常でしかないのですが、症状のないうちに全身の動脈がむしばまれ、動脈硬化が進むからです。

その動脈硬化の進行具合は、体質や日々の生活習慣が関係し、人によってさまざまです。症状がないから大丈夫、ではないのです。

遺伝を含めた自分の体質や、生活習慣、現在治療中の病気などをひっくるめて、動脈硬化を起こさずに若い血管のままで元気に生活するにはどうしたらいいのか、じっくり自分に向き合って考えてみてください。

自分に合った予防法が、少し見えてくるのではないのでしょうか。

脂質異常症は、動脈硬化を起こす一番大きな原因ですが、一人ひとりが、自分にとって必要な予防法を実践すれば防げるものです。症状がないうちから始め、生 涯続けられるよう、まずは生活習慣の工夫から始めてみてください。先手必勝です。